ニシノユキヒコの恋と冒険
ニシノユキヒコを囲む女の人から見たニシノユキヒコの話。
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11/26
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 16回
- この商品を含むブログ (136件) を見る
私だったらどうだろう?と考えてみる。例えば会社にニシノユキヒコがいたら。軽い会話はするだろうけど、そんな掴みどころのない人間と積極的に仲良くなろうとは思わないだろう。本一冊分のエピソードを読んでも彼がどんな人間なのか結局わからないというのに、表面だけの会話で彼の人となりがわかるとは思えない。
例えば友達が、ニシノユキヒコのことを好きになってしまったとする。気持ちはわからなくもないが、幸せな結末は見えないのでおすすめはしない。でもどれだけ私が言葉を尽くしてそんな男と付き合うのはやめなさいと言ったところで、友達は好きになることをやめられないだろう。私はきっとそれを、頂点に登っていくジェットコースターに乗っている客の悲鳴を聞くような気持ちで見ているだろう。もう手遅れ。心行くまで悲鳴を上げてジェットコースターを堪能して、また乗り場に戻って来ればいい。
では私の心にニシノユキヒコがするっと入ってきてしまったらどうだろう。好きにならないとは言い切れない。結局はこの本に出てきた数々の女と同様に、ちょっと好きになって、そしてやっぱり掴みどころがなさすぎて降参するのだろう。モテるかモテないかという尺度で言えばこれ以上ないくらいモテるのに、誰のことも愛せず誰からも愛されないまま死んでいった、かわいそうな人の話。